超短篇小説

フィクションです。

No.10 僕、ウェイの土地に上場します。

何も取り柄がないことが悩みだった。高校卒業後は興味もないようなアルバイトを転々としていたが、これといった職を手にするまでには至らなかった。中学生までは本気で松阪牛になることを夢見ていたが高校に入り担任に相談すると「君のその頭と顔だと厳しい。…

No.9 犬は犬でもイッヌのイッヌ

見事な夕暮れが海の水面に反射している早朝4時過ぎ。195cmの大男が運転する軽トラックの荷台に乗せられた私はそのキラキラとした湾を眺めていた。男はまた車を運転し、今度は砂浜がある海岸へと向かった。砂浜に着くと、どこの国の言葉か分からない文字が書…

No.8 ニコニコパウダー卍

降り続く雪と暴風に煽られながら帰路を歩いていた。家賃が540円。そう聞いて入居したのは1LDKの救急車。メリットは365日風邪を引いていても安心であること。デメリットはメリットを除く全ての事象。備え付けの火災報知器は呼吸をし二酸化炭素を排出しただけ…

No.7 右から5,6番目の事実

その日私は午前8時から午後8時までパンを売っていた。皆さんご存知の通り私はぽやしみ自然公園駅から徒歩2分の場所に構えられているパン屋だ。開店時間の1時間前に店長、30分前に従業員たちがやってきた。普通、パンは仕込みから何から時間がかかるのでもっ…

No.6 驚高の殿堂

ハロウィンの日に似つかわしい不気味な色の空が広がっている。私は数週間程前に舗装されたばかりの綺麗な歩道を少し俯き加減で歩いている。16時を回ったところであるようだ。最近は日が短くなってきて、ついこの前まで明るかったこの時間の空もすっかり暗く…

No.5 タピオカミルクティー (4)

夕方になっても太陽は沈むことを知らず、それどころか蒸し暑くなっていた。ストラスブールはギンギラギンに物々しい雰囲気を装った太陽をカフェのガラス越しに眺めていた。遥子と話すことこそ出来たものの他の面々とはこれと言った会話も無いままに初日を終…

No.4 タピオカミルクティー (3)

この日はスッキリとした青空に恵まれながらも大して暑くないという素晴らしい朝になった。7月26日、魔剤大学の中庭の2階席では蝉や牛、豚の鳴き声が聴こえていた。1限の授業を持つ羅針盤長三郎教授はこの中庭でのんびりとしていた。1限が始まるまではまだ-15…

No.3 タピオカミルクティー (2)

No.6の続編です。ですので6を見てない方はそちらを先に、どうぞ。 ~タピオカミルクティー~ 遥子は4階の教室へと向かっていた。彼女もまた、魔剤大学の学生である。この日から大量に留学生が来ることは知らされていたため彼女は心を躍らせながら大学に着弾…

No.2 タピオカミルクティー (1)

前回の 「オニオンとかいう玉ねぎ」 、想像以上の高評価を頂きとても驚いています。こちらとしても手応えがあった作品ではありますが反響が大きくてさらなる自信に繋がりそうです。 今回も同じような、所謂 “小説” のスタイルでの投稿にしてみたいと思います。…

No.1 オニオンとかいう玉ねぎ

こんばんは。そしてお久しぶりです。 本日はレシピではなく感動の作品をお届けします。涙腺の準備はいいですか?涙腺11本あっても足りませんよ。覚悟を決めてお読みください。 ~オニオンとかいう玉ねぎ~ ここは都内にある18階建てのタワーマンション。この…